第1回円卓会議 議事録
「テーマの確認、共生の方法についてアイディア出し」
(撮影:板橋優樹)
日時:2011年8月2日 午後1時~午後4時
会場:コンファレンススクエア エムプラス ミドル3会議室
1.ごあいさつ、自己紹介
主催者より、今回の円卓会議についての趣旨説明が行われた。
各委員より、自己紹介が行われた。
2.会議の目的と今後の進め方
本会議の進捗と結果の公表方法について確認した。
円卓会議の成果は、共生について具体的なアイディアおよび共生に対する期待や懸念を、著者を各委員とする提言として公表することとした。報告書の表紙に日本財団助成事業と記載されることについて確認した。
円卓会議の進捗については、ホームページを開設し、趣旨、委員名、各回の議事録、提言を随時公表することについても確認された。
主催者より、規約案について説明し、委員が確認した。
3.洋上風力発電への期待、懸念
洋上風力発電への期待、懸念について各委員が書き出し、それぞれの意見の整理を行った。洋上風力発電への期待として、以下の事項が挙げられた。
- 洋上風力発電は、陸上の風力発電に比べ発電量が多く、沖合に行けば行くほど発電量は多くなる。通常の陸上風力発電に比べ、洋上風力発電は発電量が2、3割高い。
- 洋上風力発電に係る調査や修理の際に、傭船による漁業外収入が得られる。
- 洋上風力発電による近隣の漁港施設への電力を供給できる。
- 洋上風力発電の支柱等が魚礁となり、新たな漁場ができる可能性がある。より近い場所で漁獲が可能となり、漁場への距離短縮は、燃料代の節約にもつながる。
- 洋上風力発電の建設は、波高の抑制につながる可能性がある。小型船を使用する漁業者にとっては波が静かであることが望ましいため、この効果は好都合である。
- 洋上風力発電は、海上の風速の確認にも役立つと考えられる。風車の回り具合の目視や風速データの提供により、当日の海上の様子をより正確に知ることができる。
- 洋上風力発電の建設により、新たな税収が期待される。
洋上風力発電の建設により想定される懸念として、以下の事項が挙げられた。
- 自然エネルギーは補完的エネルギーという位置付けで考えられ、安定的なエネルギー供給に資さない。産業や家庭へのエネルギーの安定供給への要望が存在する一方、発電事業者は、固定価格買取制度の下で発電した分だけ売却できるため、エネルギーの安定供給への貢献のインセンティブは少ない。
- コストについては懸念がある。洋上風力発電は陸上風力発電の約二倍の建設費用がかかり、修理のコストも洋上というアクセスのしにくさから陸上に比して高くなると考えられる。但し、故障の頻度は、洋上と陸上とで同程度とみられる。
- 落雷等による羽の破損により、海上で操業している漁業者が被害を受ける可能性も捨て切れない。但し、風力発電は堅い地盤まで掘って建てられているため、地震により倒れる可能性は低い。洋上に特徴的な塩害については、羽及びタワーについては起こらないと考えられる。風力発電の内部機器については、塩害が生じる可能性がある。
- 法規制についてまだ不明確な部分が多く、統一的な対応方針がない。例えば、建築確認等は法律の文面上、陸上に限定されているため洋上に建設される洋上風力発電には適用されないと言われるなど、その全体像はまだ明らかではない。
- 洋上風力発電は、予定海域で実施されている漁法によっては漁業の障害となる。例えば、底引き網漁や巻き網漁等が行われている場所では、洋上風力発電の存在によって漁業が困難となる。
- 電波障害も懸念の一つである。陸上では一般的に、電波障害が発生しない場所を調査して建設されているが、洋上では今後、洋上での携帯電話や漁業用無線の利用に影響があるかは未確認である。
- 景観上の問題は、ステークホルダーの把握の課題として認識される。例えば、漁業者の納得と地域住民の理解は同じではない。さらに、事業者として納得を得る必要があるステークホルダーの範囲は必ずしも明確ではない。
- 低周波騒音など、風力発電が健康に与える影響についても懸念はある。陸上と洋上では健康に与える影響に差があるのか、また、複数機が同一地区に建設された場合で異なる影響があるかは、まだ明らかではない。
- 洋上風力発電の建設により、潮流や砂の流れに変化が起こる可能性も懸念されるが、この点についても未だ明らかではない。
- 洋上風力発電は漁船の安全航行の支障となる可能性がある。小型船はレーダーを装備していないため、夜間の航行において不安が生じる。
- 洋上風力発電によるバードストライクが周囲の漁業に影響を与える可能性がある。例えば、落下した鳥を目当てに周囲にサメが集まるようになれば、漁業にも影響が生じる。
4.地域・漁業・事業者の互恵関係の可能性について議論・整理
各委員が地域・漁業・事業者の互恵関係の可能性として考えられるものを挙げ、全員で整理を行った。
(1) 電力の地産池消
地域の中で電力の地産地消(マイクログリッドなど)を考えた場合、洋上風力は一つの電源オプションになりうる。しかし、既存の電力網では電力の地産地消は容易ではない。今後の電力政策等の変更によっては、地産地消が可能となり、洋上風力のメリットが高まりうる。
(2)漁業者への融通、共同事業化
事業者と漁業者の互恵関係としては、電力の融通や発電所への共同出資といった方法も考えられる。まず、漁業組合は大量の電力を消費する製氷施設、冷凍冷蔵施設を保有していることが多いため、電力供給には魅力を感じると考えられる。しかし、事業者からの直接の融通は電力の固定価格買取制度の下では事業採算性確保の観点で困難と考えられる。漁業組合が自ら風力発電を所有するという選択肢については、特定の条件のもとでどれほどの収益が得られるかということを熟慮する必要がある。事業者と地元漁協による共同出資による事業化は、億単位の出資を漁協ができるかという制約があると同時に、出資比率以上の配当を漁業組合に渡す場合、事業者は漁業補償額との比較で判断すると想定される。
(3) 漁場としての活用、管理等への傭船需要
洋上風力発電の設置による漁場の形成や、メンテナンスに必要となる傭船等による漁業外収入は相互利益の一つである。
(4) 観光拠点としての活用
洋上風力立地を観光の拠点として、他の観光スポットと組み合わせることで集客効果が見込めるかも知れない。先行事例としては郡山布引高原風力発電所が挙げられる。但し、人口の多い地域からのアクセスの良さや他の観光資源の存在などの制約条件が考えられる。
(5) 地域産業・税収への直接効果
地域での税収および雇用確保が考えられる。現在のところ、洋上風力発電所からの税収は固定資産税のみであるが、今後の政策上の位置付けによっては、電源立地に対する交付金も期待される。雇用確保については、定期メンテナンス要員の必要があるため、規模に応じて小規模ながら雇用は見込める。
(6) 地球環境問題への対応
国全体へのメリットとして、風力発電の増加により、二酸化炭素の排出量を削減できるという利点も挙げられた。
5.専門家に照会する事項
次回以降の円卓会議において、専門家に照会すべき事項を以下の通り整理した。
洋上風力発電の懸念については、洋上風力発電の環境影響評価について詳しい者、関連法制度の専門家に照会することが決定された。
洋上風力発電への期待を踏まえた互恵関係の可能性については、(1)電力の地産地消については概念だけでなく事業化まで見据えた具体的知見を有する専門家、(2)共同事業化については先行事例において経験を有する専門家、(3)漁場としての活用については魚礁等の専門家、(4)観光拠点としての活用については、観光の観点から自然エネルギーでまちづくりを行う自治体等に照会することとなった。また、(5)地域産業等の地元への直接効果については、専門家が見つからない場合、主催者が海外の費用便益分析事例等を調査することとした。
以上