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各回の議事録

政策提言

第2回円卓会議 議事録
「技術的可能性について意見交換」

日時:2011年11月16日 午前9時~午後12時30分
会場:コンファレンススクエア エムプラス ミドル3会議室

第1部 専門家パネルからの情報提供と質疑応答

1.「洋上風力発電施設による水産振興」
鳥取大学工学部土木工学科 松原雄平教授

 松原教授より鳥取県湯梨浜町泊漁港沖での風況観測の状況についてお話いただいた。この水域に設備容量3MWのタワーを10基建設予定。海底地盤には十分な厚さの砂層があるため、モノパイル工法による支持方式が想定されている。泊漁港の第二沖防波堤に風況観測ポールを設置し、平成22年12月から海面20m、30m、40mの高さでの風速と風向の観測を行っている。南南西ならびに南西の風が風速、頻度ともに卓越している。建設したときに実際にこの風力が得られるのか調べるため、建設サイトから西に約10kmの北栄町発電団地(1500kWのタワー9基)での観測結果も得ている。泊漁港と北栄町風力団地のデータには比較的高い相関が得られるが、泊漁港の風速が大きく現れやすい。一般的に洋上の風速が大きいとはいえ多少過大評価している可能性があり、精査が必要である。北栄町ではすでに五年間の稼働実績があり、その観測データをもとに泊漁港での風力発電施設の建設の実現性について検討する予定である。

 続いて、ウィンテック社藤田様より漁協や住民との関係についてお話をいただいた。ウィンテック社は地元の漁協や住民と連携をはかっており、いまのところ比較的好意的な反応が得られているが、今後実際に事業を進めるにあたりどのような反応が得られるかはまだ分からない。現在、一年間風況観測をすることについては同意を得ているが、実際の事業に関しては観測を終えてから改めて議論する予定。当初は漁協から共同出資してもらうという話だったが、法律により共同出資は難しいので、自家電力としての利用と金銭での利益還元という構造を提案している。従来の画一的な漁業補償は行わない。さらに、基礎工事の際、本体の基礎部分が漁礁になるよう工夫する等して漁協と協力していきたいとのことであった。

 質疑応答では、漁協による資本参画が困難な理由、潮流による砂の移動への影響、漁業の操業形態との立地可能性の関係、固定価格買取制度による価格設定との関係などについて、委員との議論を深めた。

2.「洋上風力発電における環境影響及び地域との共生について(浮体式洋上風力発電実証事業を例に)」
環境省地球環境局地球温暖化対策課 平塚二朗課長補佐

 再生可能エネルギーの最近の動向についてお話をいただい上で、風力発電事業に係る環境影響評価についてお話をいただいた。これまで風力発電は環境影響評価の対象とされていなかったが、今後対象になることが既に決まっている。法律で環境影響評価が義務付けられるのは大きな発電所のみで、その基準について議論がなされてきた。先週末、1万kW以上の規模の風力発電所について環境影響評価を行うことが決まった。評価結果の事業への反映に関して、環境大臣は許認可権を持っているわけではなく、許認可権をもつ経済産業大臣に意見を述べることができるという位置づけである。風力発電事業に環境影響評価が必要な理由としては、騒音・低周波音、バードストライク、景観への影響、水環境への影響などが挙げられる。これまでは、一部自治体においては条例によって環境アセスメントが義務付けられているが、義務付けられていない自治体において実施する風力発電事業では事業者が住民の意見聴取手続を行っていない例があった。

  洋上風力発電は現時点では海外でも事例数は少なく、日本で設置されている三ヶ所は全て海岸線近くに設置されている。環境影響評価に関しても、洋上に特徴的な事項や規模要件についてはまだ十分に議論されていない。しかし洋上風力発電の将来性を見込み、環境省では昨年度より浮体式の実証機の設置・運転に向けた環境影響評価の項目等を検討しているところである。実施海域は、生態系に悪影響を及ぼさない、付近の市民や漁協から合意を得られる等の条件を考慮し、長崎県五島市椛島周辺に決定した。また、スパー型のプラットフォームを選定した。まず小規模の試験機(100kW級、海面からの高さ約40m)を来年から一年程運転してから、再来年よりフルスケール(2MW級、同高さ100m)の実証機を設置し、平成27年度まで運転する予定である。まず小規模の試験機を設置・運転することで、実証機の設置・運転に反映させるデータを取得し、また、地域の安心を得ることができると考えている。この事業を通し、陸上、着床、浮体式風力発電それぞれの違いも踏まえて、将来、浮体式洋上風力発電施設に係る環境影響評価を実施するにあたり必要な項目等を明らかにしていく。なお、 現在、独立行政法人NEDO(経産省所管)においても着床式洋上風力発電の実証実験が行われており、環境影響評価の項目や調査方法に関して議論が行われている。

  地元との調整に関して、長崎県は再生可能エネルギーに積極的であり、検討会にもオブザーバーとして参加している。また、五島市にも地元説明会への同席等の対応を行っていただいている。発電施設の係留索を展開する領域においては、漁業の操業や遊漁船の立ち入りを自粛していただくことになる。一方で、地元には漁獲量調査や海洋環境調査のための傭船にご協力いただくことを考えている。

  質疑応答では、NEDOによる実証実験の内容、環境影響による計画の変更事例などについての議論を通じ、環境影響評価について委員の理解を深めた。

3.「風力発電を用いた産業観光」
(株)エイ・ワークス 赤崎まき子代表取締役

 「風力発電を用いた産業観光」について、エイ・ワークス株式会社、赤崎まき子代表取締役より日本国内及び海外での取り組みについて紹介があった。

  赤崎氏は産業観光の振興に十年以上の関わりがあるものの、風力発電を用いた産業観光に携わられた経験はないという前置きの後、産業観光の概要について説明をされた。

  はじめに、風力発電を用いた産業観光の可能性について、風力発電の観光資源としての価値が提示され、それらの価値がいかに実例に現れているかの紹介がなされた。

風力発電が持つ価値は、

  1. 景観としての価値:風力発電の新しい景観に観光資源としての価値がある
  2. ECOの価値:風力発電は、3.11以降更に期待される脱原子力の切り札
  3. 教育の価値:修学旅行やスタディツアーにも利用できる「学び」の側面
  4. 他の要素との組合せによる観光価値:温泉、レジャー、飲食等の施設を組合せたコース設定で、売れる観光商品を造成

の4つに分類することができる。

これらの価値の実例としては、

オランダの世界遺産である「キンデルダイク」(景観の価値)
「パームスプリングス」(景観の価値)
デンマーク・サムソ島の「エコ・ミュージアムの島」(ECOの価値、教育の価値、他の要素との組合せによる観光価値)
「ヨセミテ」(他の価値:自然景観)との組合せによる広域観光化)

その他、地元の海産物や農産物を利用したグルメや特徴的なお土産との組合せによる価値向上の取り組みが挙げられた。

  また、国内における風力発電を産業観光資源として利用している事例として3例が挙げられた。

 「鷲ヶ峰コスモスパーク」は、風力発電と花を組合せパノラミックな眺望も楽しめるが、その一方で、パークの理念や理想が提示されておらずコンセプトが曖昧である。

  愛媛県伊方町の道の駅「瀬戸町農業公園」は風力発電と農業、グルメ、ショッピングを組合せた複合施設。

  山形県庄内町の「ウィンドーム立川」には、風力発電の歴史的遺産も展示されており、これを時系列で整理すると教育効果としても素晴らしいものとなるとのことであった。

  ただし、風力発電は産業観光の資源となる一方で課題も懸念される。(低周波)騒音、景観影響、破損による被害の懸念、動植物への影響、産業への影響等である。景観の損壊については、現在フランスのモンサンミッシェル付近17kmの位置に風力発電が建設される計画をユネスコが調査中で、モンサンミッシェルが世界遺産から除外されるといった噂もあるほど、景観の問題は深刻であり、解決の必要な問題である。

  最後に、風力発電を観光に活用するために以下の提言がなされた。まず、風力発電のもつ景観、エコ、教育における高い価値を「観光資源」として認識し、活用することである。

  第二に、観光資源として活用するためには他の観光要素との組合せによる狭域、広域のコース設定が重要である。

  第三に、懸念されている問題のクリアが必要ということである。
「安心・安全」の徹底追求をベースに、産業観光資源としての有効活用をすべきであるという提言がなされた。

  質疑応答では、布引高原発電所の事例、観光資源としての活用に向けた具体的な戦略についての議論を通じ、観光資源としての活用の戦略について委員の理解を深めた。

第2部 各論点についてのとりまとめについて議論

事業者と漁業者が相互に利益を享受できる仕組みづくりについて

 現状では、漁業組合が共同事業に参画することは法律上難しいと考えられる。しかしこのような状態では、漁業組合が発電事業に関わる方法は、利益の一定割合を受け取るといった消極的なものに終始してしまう。漁業者が自ら発電事業に積極的に参画できるよう法制度の変更が求められる。但し、法律が変更されたとしても漁業組合として意思決定の難しさや事業に関するノウハウのなさから、直ちに投資を行うという意思決定はできないであろう。漁業組合としての現実的な方法としては、一部の海域の利用を事業者に容認する代わりに、利用料を支払ってもらうという形などとなるだろう。

環境影響評価のあり方について

 環境影響評価について国が現在、どのような検討をしているのかについて、課題を含め、情報公開を積極的にすべきである。また、環境影響評価に限らず、事業実施時に発生しうるさまざまな環境上の問題について、事業者は、住民へ真摯に対応する必要がある。同時に、行政は中立的な立場として、両者の間で調整する役目を果たすことが期待される。

 地元自治体では安全安心を最優先にしているため、法律で規定される以上のことについても、少なくとも20年以上先を見据えた将来のメリット・デメリットについてまで、考える必要があることから、国はできるだけ明らかにしてほしい。3.11後の価値観の変化もあり、自然エネルギーに対する住民の関心も高くなっているため、行政も説明責任を求められてくる。その説明材料を提供する主体として国、もしくは然るべき主体の役割を期待する。

風力発電の観光資源化について

 風力発電の観光資源化については、他の観光資源とうまく組み合わせる必要がある。事業者に期待するのではなく、地元自治体などにおいて観光振興に関心の高い者が中心となって自主的に観光資源としての活用に向けた調整を先導すべきである。

以上